TAKUMI OTSUKI

大槻卓伺 - Takumi

1988年生まれ。大阪府出身。幼少期より、料理人を目指すという確固たる意志を胸に、独学で料理の腕を磨き続ける。神戸大学経営学部卒業後、渡仏。3年3ヶ月の間、三ツ星レストラン【Le Petit Nice (Marseille)】 (ル プティ ニース)など、ガストロノミー、肉料理、魚料理といったテーマを決めながら国内5軒の星付きレストランで修業を重ねる。2015年11月に帰国し、実家で試作を重ねたのち、2017年2月、【Takumi】をオープン。開業2年目でミシュランの星を獲得する。安定した基礎のうえに経験と思考を積み上げることで、新しいおいしさを生み出している。

NARRATIVE

「想定を超える」味は、緻密さから生まれる。粋で儚いモダンフレンチで“美食体験”を創出する。

弱冠28歳で東京・西麻布に自分の店をオープンした大槻シェフの姿勢は、この言葉に凝縮されている。理路整然とした語り口は、「仮説を立て、検証実験を行う」というプロセスを繰り返しながら、理想の料理を追い求めるシェフの個性とシンクロする。

「料理をつくるうえで、オリジナリティ、自分らしさは大切にしています。お客さんの期待値や想定は超えたいけれど、超えすぎると違和感になる。そうならないように、理論的に構築していく必要があります。もちろんおいしいことは前提ですが」

大槻は、店に来た客がより正確に、より効果的に料理を理解できるように工夫を凝らしている。料理の詳細やシェフの意図を記した説明カードと馴染みのうすい食材を入れた小瓶を、一皿ごとに用意しているのだ。

オリジナリティに人一倍こだわる大槻のルーツは少年時代に見受けられる。物心ついた頃から料理人を志し、土日に家族の料理を作るのがいつしか習慣になっていたという。フレンチを選んだのはなぜだったのか?

「和洋中、なんでも作っていたのですが、和食では母から的確なアドバイスが飛んでくるのが嫌だったんです。成功も失敗も自分で噛み締めて次に活かしたいタイプだったので、一番口出しされないジャンルを選んだという感じでしょうか。あとは、前菜から付け合わせ、メインディッシュまで、ベストな組み合わせを考えながら何時間もかけて準備するのも楽しかったんです」

教育には厳しい高校教師の母から、「勉強は最優先」という価値観のもとで育てられた背景もあっただろう。もともとおままごとや粘土細工など、時間をかけて何かを作り上げていくひとり遊びが好きだった大槻にとって、自分の世界を守る術がフレンチだったのだ。

大槻は神戸大学経営学部卒。料理人としては異色の経歴の持ち主だ。同大学への進学を決めたのも、「好きにしていいけど、大学だけは行け」という“鉄の掟”に従ったからだ。だがそんな “不自由”な状況でも、大槻は柔軟だった。

「将来はオーナーシェフになりたかったので、大学では経営について学ぼうと考えたんです」

シェフになるには遠回りでしかないような道も、意味のある選択として受け入れたのだ。

大学時代の4年間を実りある時間にすべく、大槻は有名フレンチレストランでアルバイトを始めた。本来はアルバイトを採用しない店だったが、頼み込んで雇ってもらったのだ。時給は約260円。包丁や鍋に触らせてもらえるわけもなく、ひたすら洗いものをするだけだった。

「まわりの正社員の人たちは、大事な仕事を与えられてもいないのに、毎日のように殴られている。それを見て、働くなら日本じゃないな、フランスだなと思ったんです。(笑)年功序列的な日本と違って、フランスは実力さえあれば年齢や経験は関係ない。フランスの方が箔もつくだろうし、何より独学で技術や知識を培ってきたと自負していましたしね」

だが、そんな環境においても、大槻はチャンスを自らの手でつかみ取った。店に出入りしていた食材の卸業者にこっそり声をかけ、フォアグラやトリュフなどの特殊な食材を個人購入し、週に一度、自宅で調理したり。料理人が訪れる市場にも足しげく通い、店のおじさんと親しくなって食材の知識を増やしていったり。

さらには家庭教師のアルバイトで軍資金・750万円を貯めるなど、十全に準備をした大槻は、大学卒業後すぐフランスに渡り、本格的な修業生活に突入。3年3ヶ月滞在したフランスでは、国内5軒の星付きレストラン(二ツ星4軒、三ツ星1軒)で経験を積んだ。

「実務経験の短さにハンデを感じていたので、なるべくショートカットして、効率よく学ぼうと考えていたんです。フランスは国土が広いので地域によって気候が全然ちがいますし、国境に近いところは隣接する国の文化が色濃く表れている。要は、料理にも地域の個性がはっきり出ているので、ガストロノミー、肉料理、魚料理といったテーマを決めて、フランス各地に点在しているスペシャリテを学びました」

そうして店を渡り歩くなかで、大槻はある結論に行き着いた。

「(自分の腕がすぐれているという意味ではなく)自分がやりたいレストランは世界に存在しない。そう気づいたことで、世界に一つしかないレストランを開こうという気持ちが固まったんです」

とはいえ、現地での収入は3~5万/月。そこから(食べ歩きのための勉強代を除いた)生活費をまかなう生活の中に、オリジナルの料理を試作する余裕はない。帰国後は実家に戻り、半年ほど試作に没頭。イメージを具現化できるようになったタイミングで東京に引っ越し、2017年2月、現在の場所に店を構えたのである。

開業2年目にしてミシュランの星を獲得するなど、順調にステップアップしている大槻はまだ32歳。貪欲に料理人としてできることを模索し続けている。

「コロナ禍で実感したのは、ほんとに困ったときに私たちのような(美食を提供する)レストランは無力だということ。服やアクセサリーのように、かたちあるものとして残らないし、粋だけど儚いものだとも思います。でもそこに僕は人生を賭けているわけだし、改めて突き詰めていくおもしろさを感じるところではありますね。

こういう世界に価値を感じない人や無駄だと捉える人もいるでしょうけど、実はひとつの料理にすごくたくさんのものが凝縮されているし、ロスも最小限になるように工夫しています。料理人としては、世のため、人のためにできることを探していきながら、美食に価値を感じる人を増やしていきたいですね。今回のコロナ禍は、美食にたずさわる料理人にとって、自分たちの存在価値を見つめ直すいいきっかけになったように感じています」

そんな大槻シェフがビショクルに参加を決めた理由は?

「ただお腹いっぱいになるだけでなく、心が満たされる、頭の中が整理されるといった“美食体験”を自宅でも味わっていただければと思っています。こういったレストランに足を運ぶ機会の少なかった人にもいいきっかけになればと思い、参加を決めました」

ビショクルで提供する「穴子の白バルサミコ酢焼き」にも、食材どうしの相性や全体のバランスを理論的に突き詰めるシェフの美学が染み込んでいる。

ぜひ一度、考え抜かれたシェフの料理を味わってみてはいかがでしょうか?

DISH

アナゴの白バルサミコ焼き

大槻卓伺 - Takumi

¥ 3,080 (税込み)

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大槻卓伺 - Takumi

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大槻卓伺 - Takumi

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大槻卓伺 - Takumi

¥ 1920 (税込み)

VOICE

大阪府 女性 30代

S.A

濃厚なソースにふわっふわで少し甘めのあなごさんがお口の中でマリアージュ。炙ったあなごの風味が味に締まりを出してくれており付け合わせに豪華なジロール茸の食感がシャキシャキでアクセントになりクセになっちゃいます♫一緒に食べていた母がとても気に入り私と取り合いになりました、、、笑
母とソースがフランスパンに合いそうという話になりまた注文させて頂きましたらパンにソースを付けてさらに美味しく頂いてみようかと思ってます。

大阪府 女性 30代

M.T

まず、冷凍でもアナゴがふわふわで美味しかった!ゆっくり流水で解凍するのがポイントなのかな?作る手順を見た時は、シロップを塗りながら3回も焼くのすごく大変そうだと思ったけど、トースターにクッキングシートを敷いてその上にアナゴをのせてトースターに入れてから直接シロップを塗りながら焼いたら思ったより手間もかからず簡単でした!ソースもシロップも美味しくって、両方余るからバケットにつけながら食べると最後まで美味しく食べられました。キノコのソテーは個人的にちょっと酸味が強いかな?と思ったけど、ソースと一緒にたべたら丁度良かった!とにかく、ソースがお家では絶対出せない味だな~と思いました!総合的にお店の味そのままお家に来た!という感じでしたー!ソースでワイン飲みたくなる!料理の色的に映えないから、オレガノを飾りで乗せました!

大阪府 女性 30代

R.S

白バルサミコのシロップがキュン甘酸っぱく穴子との相性も良かったです。欲張ってたっぷり縫ってしまうとべちゃっとなるので、薄く塗り重ねて丁寧に焼くのがいいと思います。ソースもがほんとにたっぷり入ってるのでものすごい香りです。トリュフ好きにはたまらないですね。ソースもシロップも結構多めに入ってるので二人分くらい作れるのではないでしょうか。バゲットにもたっぷりソースを付けて食べたのでとても贅沢でした。

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RESTAURANT

Takumi

Takumiのコンセプト。 それは「組合せの妙を正確に理解し、楽しめるレストラン」 曖昧な印象だけで料理を捉え、コース料理を食べ終えた時には、すでにコース序盤の料理の記憶が薄れている。そのような事のないよう、Takumiらしい個性溢れるお料理をご用意し、説明カードや食材のサンプルの小瓶を用いたプレゼンテーションで美味しさだけでなく、料理の内容やシェフ大槻卓伺の意図を出来るだけ正確にお伝えしていきます。

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世界各国様々な場所や人との接点を持ちながら、日本国内において自らの哲学や美学を元に、オリジナリティー溢れるクリエイティブなフードシーンを作り上げてきたシェフたちが、BISHOKURUのTHE BEST CHEFとして多数参加いています。

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